松園屈指の人気作《牡丹雪》

山種美術館の松園コレクションの中で屈指の人気を誇る《牡丹雪》も見逃せない。以前、同館で開催された展覧会「ザ・ベスト・オブ・山種コレクション」で人気投票が行われ、《牡丹雪》は松園の作品で1位、全体でも6位に入ったことをよく覚えている。
《牡丹雪》は雪降る冬空の下、傘をさし、身を縮めて歩く2人の女性を捉えた作品。その表情や着物の色彩の美しさも見事だが、なんといっても大胆な空間の使い方が素晴らしい。完璧といいたくなる、絶妙な人物の配置。実はこの絵にはそっくりな同名異作があり、他の美術館に収蔵されているが、そちらでは人物がやや大きく描かれている。心にすっと入ってくる心地いいバランス感覚という点で、山種の《牡丹雪》に軍配をあげたい。

展覧会では松園の作品に加えて、様々な画家による女性を描いた人物画も展示されている。松園と同時代に活躍し「西の松園、東の清方」とうたわれた鏑木清方、その清方の弟子にあたる伊東深水、山川秀峰。今年、生誕130年の小倉遊亀、生誕120年の片岡球子。さらに「大正三美人」のひとりとして知られ、松園作品のモデルも務めた九條武子(展示期間:〜6/15まで)による美人画も紹介されている。松園からの影響や個性の違いを探りながら鑑賞する時間が楽しい。
特別展「生誕150年記念 上村松園と麗しき女性たち」
会期:開催中~2025年7月27日(日)
会場:山種美術館
開館時間:10:00~17:00 ※入場は閉館の30分前まで
休館日:月曜日(7月21日は開館)、7月22日(火)
お問い合わせ:050-5541-8600(ハローダイヤル)