ロシア「影の船団」への制裁強化も影響は限定的か

 欧州連合(EU)は20日、ロシアの継戦能力を支える原油収入を減らすため、原油輸出の制裁逃れに使っている「影の船団」の189隻を新たに制裁対象に指定した。既に対象となった分を合わせると342隻となり、影の船団の過半数を超えたが、「制裁がもたらす原油輸出への影響は限られる」と市場は判断し、原油価格が上昇することはなかった。

 EUと異なり米国はロシア制裁に消極的だ。トランプ大統領は「ロシアが停戦に後ろ向きなら追加制裁を発動する」と主張していたが、19日のプーチン大統領との電話会談後も「多くの選択肢を検討している。様子を見てみよう」と述べただけだった。

 22日にカナダで開催された主要7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議で海上輸送されるロシア産原油の取引価格上限を現行の1バレル=60ドルから50ドルに引き下げることが議論されたが、米国が引き下げに難色を示したため、合意できなかった。

 ロシアとウクライナの戦争に巻き込まれたくないトランプ氏にとって、ロシアに打撃を与える新たな制裁を科す選択肢はないのかもしれない。

 市場が反応したのは、影の船団を取り締まるEUとロシアとの間の緊張の高まりだ。

 エストニア政府が18日「ロシアがギリシャ船籍の石油タンカーをバルト海で拿(だ)捕した」と発表すると、ロシア政府は20日「北大西洋条約機構(NATO)がバルト海で船舶の自由を妨げる攻撃的な行動をとった」と非難した。

 エストニア海軍によれば、タンカー拿捕の際、ロシアの戦闘機がNATO領空を侵犯したという。NATOとロシアが軍事的に衝突する事態となれば、原油価格が急騰する可能性がある。

 中東情勢も再びきな臭くなっている。