ベッセントを待ち受ける難題
ベッセント氏は9日、議会指導部に対し、7月中旬までに連邦政府債務の上限引き上げもしくは債務上限の停止を決めるよう要請した。米国の債務残高は既に36兆2000億ドルに達しており、法律が定める上限(36兆1000億ドル)を既に上回っている。
財務省は一時的な措置でしのいでいるが、議会が適切な行動をとらない限り、8月に財政資金が枯渇し、米国がデフォルト(債務不履行)に陥ってしまう。
米議会の上下両院で共和党が多数派となっているが、この問題は予算案と絡めて議論されていることから、調整が難航している。共和党の財政強硬派は「債務上限問題を人質にとってでも自らの主張を通したい」との強硬姿勢を崩しておらず、ベッセント氏が求める期限までにこの問題が解決する目途は立っていない。
ベッセント氏は市場との対話には長けているが、ワシントン政治には不慣れなのが気がかりだ。この問題の対処を誤れば、米国の株式市場どころか、世界の金融市場全体が再び大混乱に陥ってしまうのではないだろうか。
藤 和彦(ふじ・かずひこ)経済産業研究所コンサルティング・フェロー
1960年、愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒。通商産業省(現・経済産業省)入省後、エネルギー・通商・中小企業振興政策など各分野に携わる。2003年に内閣官房に出向(エコノミック・インテリジェンス担当)。2016年から現職。著書に『日露エネルギー同盟』『シェール革命の正体 ロシアの天然ガスが日本を救う』ほか多数。