発光生物は何年前から地球上に存在しているか?

別所:おおよそ5億4000万年前のカンブリア時代前期には、サンゴの一種である八放サンゴが、発光生物として存在していたと考えられます。

 イソギンチャクやクラゲ、サンゴは「刺胞動物門」の生物です。イソギンチャクやサンゴは、刺胞動物門の中の「花虫類」と呼ばれる分類群に分けられます。

 花虫類はさらに、六放サンゴ綱、八放サンゴ綱の2つに分類されます。皆さんが良く知るサンゴ礁のサンゴのほとんどは、六放サンゴ綱です。

 これらは、ある程度の硬度を持つことから、ハードコーラルとも呼ばれています。ハードコーラルの中で青色の光で鮮やかに発色する蛍光をもつ種は多いですが、暗闇で自ら発光する種はほとんどいません。

花虫類の分類(出典:名古屋大学研究成果発信サイト)

 一方で、八放サンゴ亜綱のサンゴ(以下、八放サンゴ)は、柔らかい骨格を持つためソフトコーラルと呼ばれます。発光するサンゴのほとんどが八放サンゴです。

 私は、現存する八放サンゴの中で、発光するサンゴのルシフェラーゼの遺伝子を解析し、その結果を2020年と2024年に論文で発表しました。

 私の解析では、現在生息する発光する複数の八放サンゴが、類似した遺伝子を有するルシフェラーゼを使用していることが明らかになりました。系統樹(※)を使って、それらの起源を辿っていくと、約5億4000万年前まで遡ることができました。

※異なる生物種間の進化的関係を示す分岐のある図

 つまり、約5億4000万年前の海に、発光する八放サンゴが存在していたということが示唆されたのです。

──2020年には、餌から発光物質を得ているキンメモドキに関する論文を発表していました。

別所:キンメモドキもまた、カウンターイルミネーションのために発光する魚の一種です。