海洋生物の多くが発光能力を持っている理由

別所:まず、陸上の発光生物である蛍と同様に、求愛のために発光する海洋生物が確認されています。代表的な例として、カリブ海に生息するウミホタルの仲間が挙げられます。ちなみに、日本近海に生息するウミホタルは、身を守るために光を発しています。

 実は、ほとんどの発光する海洋生物は、ウミホタル同様、防御のために光を発していると考えられています。

発光しているウミホタル・別所-上原学

 一部のイカのような深海の捕食魚類は、非常に発達した視覚に頼って狩りをしています。暗闇の中で目を凝らして獲物を探しているときに、突然発光が起これば、たまったものではありません。光の煙幕で目がくらみ、その間に獲物に逃げられてしまうのがオチです。

 また、防御のための発光で「カウンターイルミネーション」と呼ばれる方法があります。これは「光ることで隠れる」という、少し不思議な発光ですが、多くの魚類や甲殻類、軟体動物がこの方法を使っていることが知られています。

 海の中は太陽光や月明かりがわずかに届くため、真っ暗というわけではありません。そのような環境では、遊泳中に影が海底に映ってしまい、捕食者に見つかる可能性が高くなります。

 そこで、一部の魚類や軟体動物は、海底側の腹部のみを光らせることで影を消し、背景の明るさに溶け込むことで身を隠します。これが、カウンターイルミネーションです。

 一方で、身を守るためではなく、餌を探したり、光を囮にして獲物をおびき寄せたりすることを目的に発光する海洋生物もいます。

 暗闇で餌を探すために発光する生物としては、水族館でも見られるヒカリキンメダイが挙げられます。彼らは、眼の下に発光器を持っており、深海30~400mで青白い光を放ちながら遊泳しています。

 また、餌をおびき寄せるために発光する深海生物の代表と言えば、チョウチンアンコウが有名です。

──発光生物が光るメカニズムについて教えてください。

別所:多くの発光生物は、ルシフェリンという発光物質を発光酵素であるルシフェラーゼで酸化することで発光しています。ルシフェリンとルシフェラーゼの組み合わせは何パターンもあり、発光生物の種類によってまちまちです。

 また、発光器に発光バクテリアを共生させているような生物もいます。先ほど紹介したヒカリキンメダイも、このような仕組みで眼の下を発光させています。

──発光生物は、何年前から地球上に存在しているのですか。