キンメモドキ(写真:別所-上原学)

 夜の闇の中、青白い幻想的な光を放つ海面。その下では、数えきれないほどのウミホタルが輝きながら活発に動き回っている。実はウミホタルのように光を放つ海洋生物はそう珍しくはない。

 何のために発光生物は光るのか、どのようにして光を発しているのか、不思議な発光メカニズムを有する海洋生物の発見とは——。別所-上原学氏(東北大学学際科学フロンティア研究所 助教)に話を聞いた。(聞き手:関瑶子、ライター&ビデオクリエイター)

──発光生物の多くが海に生息していると聞きました。なぜ海洋生物は、光を発する能力を持つようになったのでしょうか。

別所-上原学氏(以下、別所):海洋生物の約76%が発光する能力を持つと言われています。

 薄暗い環境では、少しでも光ることが生存を有利にします。つまり、薄暗い場所を生息域としている生物は、進化の過程で発光という形質を、世代を経て変化させてきたと考えられます。その「薄暗い場所」こそが、太陽の光が届きにくい海の中なのです。

 陸上の発光生物と言うと、蛍を思い浮かべる人が多いかもしれませんが、陸上生物で発光する能力を持つものは非常に稀です。

 太陽の光の下で発光したとしても、それはほとんど認識されることはありません。つまり、太陽の光が届く陸上では、生物にとって光る能力は生存を左右する重要な要素にはなり得ないのです。

 発光生物の中では、蛍は非常に強い光を発します。それと比較すると、海洋の発光生物が放つ光は、多くの場合で弱いです。

 ダイビングをしたことがある人ならば、10メートルも海に潜れば、かなり暗くなることはご存じだと思います。もっと深い100メートル、1000メートルの海は漆黒の世界と言っても良いかもしれません。そのような環境では、少しでも光ることが、何らかのかたちで生存に有利に働くことがあります。

 現時点では、このような理由で海に発光生物が多く生息していると考えられています。

──海洋生物は、何のために光っているのですか。