示されたAIチャットボットの「説得力」

 こうした反応にもかかわらず、研究チームは実験結果を「Can AI Change Your View? Evidence from a Large-Scale Online Field Experiment(AIはあなたの見解を変えられるか?大規模オンライン実地実験からの証拠)」というタイトルの論文草稿として発表している

 この論文によれば、研究チームが開発したAIチャットボットが、強力な「説得力」を持つことが明らかになった。AIが生成したコメントは、人間の応答と比較して著しく説得力が高く、3倍から6倍効果的であったとされている。

 特に、前述のパーソナライゼーションを施したAIの説得成功率が、最高でおよそ18%に達していたそうだ。

 打率2割弱では大したことないと思われたかもしれないが、サブレディットCMVにおける人間の説得成功率は、およそ3%程度と報告されている。そう考えると、いかにこのAIチャットボットが説得力のある議論を投稿できていたかがわかるだろう。

 また前述の通り、コメントがAIによって生成されたものであるとバレることはなかった。この点も、研究チームの開発したAIチャットボットの優秀さを示している。

 この説得力を実現した要因のひとつが、先端的なLLMの利用であったことは間違いない。

 これまでもさまざまな形で、生成AI技術を活用したチャットボットが一定の説得力を持つことが示されてきたが、その技術は急速な進化を続けている。

 特に最新のLLMは推論モデルといって、単に統計学的に回答文章を組み立てるのではなく、文脈を理解しながら推論を行うため、より自然な会話ができるようになっている。そうした自然な会話やロジックが、オンラインのユーザーたちを「騙す」のに一役買ったと考えられる。

 しかし、それより注目すべきは、研究チームが採用した、よりユーザーの心理を揺さぶるテクニックだろう。