しかし、本件で両親を一瞬にして失い、弟と妹が重い障害を負うことになった長男の小沢克則さんと妻の樹里さん夫妻は、運転者と酒の提供者だけが罰せられたことにどうしても納得できませんでした。
というのも、Aの刑事裁判で、以下のようなことが明らかになっていたからです。
キャバクラに入店断られるほどの泥酔のままドライブ、運転手に高速運転促した同乗者
この日、3人は一緒に飲酒した後、Aの親分的存在である同僚の飲食店手伝いBと、無職Cとともに、キャバクラを訪れました。しかし、彼らが泥酔していたため、「他の客に迷惑がかかる」という理由で入店を拒否され、彼らは仕方なく、2軒目のキャバクラが開くまでの時間をつぶすためドライブをすることになったのです。
BとCはこのとき、Aが酒に酔い、千鳥足でろれつが回らないような状況であるのを認識しながら運転することを要求し、「この車、どのくらいスピード出るの?」などと言って、高速度での走行を煽り続けていました。小沢さんの家族が正面衝突に巻き込まれたのは、そのわずか30分後でした。
『本件はAだけが引き起こしたのではなく、同乗者のBもCと同罪としか考えられない』
飲酒運転、そして暴走に至るまでの経緯を知った小沢さん夫妻は、その悪質さに憤りを覚え、自らアクションを起こすことを決めます。
まず、協力弁護士をさがして「危険運転致死傷罪の共同正犯」で告訴、告発しました。それを受けた検察は、「前例がない」と言いつつ、1年以上検討を重ね、結果的に「危険運転致死傷幇助」の罪名でBとCの起訴を決めたのです。