出動は年間2万9000件以上
ドクターヘリの導入に向けた動きが始まったのは、1995年の阪神・淡路大震災がきっかけです。
それ以前もヘリによる患者搬送は細々ながら実施されていました。例えば、東京都は伊豆諸島や奥多摩地区などを対象に、1967年から消防・防災ヘリによる搬送を開始。輸血用や電気ショックなどの設備を整えた「救急ヘリ」も運航されていました。しかし、目的はあくまで患者の搬送。医師や看護師を搭乗させ、現場や上空で治療を行うには至っていませんでした。

阪神・淡路大震災が発生したのは、そんな時期のことです。結論から言えば、この大震災でヘリによる被災者救出は十分な成果を出せませんでした。発災の当日、消防・防災ヘリが搬送できたのは1人だけ。ヘリによる救急体制の貧弱さが一気に浮き彫りとなり、欧米で進んでいたドクターヘリを日本でも導入しようとの機運が高まったのです。
そして1996年には導入に向けた検討会が消防庁で発足。1999年には厚生省(当時)の事業として岡山県と神奈川県の大学病院で試行が始まり、2001年に岡山県で本運用がスタートしました。2007年になると、ドクターヘリ特措法も成立して配備は全国に拡大。2022年には最後まで残っていた香川県で事業が始まり、すべての都道府県でドクターヘリが整ったのです(関西広域連合に属する京都府を含む)。
厚労省によると、2024年度現在、全国で配備されているドクターヘリは57機を数えます。直近2023年度の出動は全国で2万9223件に達しました。全国では1日平均で約80件の出動があった計算です。診療人数も2万2407人。最近では大規模災害での対応も増えており、同年1月の能登半島地震ではドクターヘリ8機が出動し、計84人を都市部の医療機関に搬送しています。