ホーチミンで開かれたベトナム戦争終結50年を祝うイベント(写真:AP/アフロ)

第2次世界大戦の終戦から80年となる今年は、ベトナム戦争の終結から50年という節目でもあります。大戦後、一部の地域では米ソの代理戦争が火を噴き、激しい戦闘が繰り広げられました。その代表例がベトナム戦争です。あれから半世紀が過ぎ、ベトナム戦争や当時の社会事情を知らない世代も増えてきました。今回は「ベトナム戦争」をやさしく解説します。

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うすらぐベトナム戦争の記憶

 この4月30日、ベトナム南部の大都市ホーチミン市では、ベトナム戦争終結50年を記念する大規模な式典が開かれました。4月30日は南ベトナムの首都だったサイゴン(現ホーチミン市)が陥落し、戦いに終止符が打たれた日です。

 式典では、ベトナムの最高指導者であるトー・ラム共産党書記長が「1975年の大勝利は20世紀の人類史における重要な転換点になった。これは信念の勝利であり、専制に対する正義の勝利でもある」などと述べました。さらに「半世紀が経って、われわれは偉大な成果を生み出した。2045年には高所得の先進国となる」と演説。戦後の経済発展を内外に見せつけました。

 実際、近年のベトナムの発展は目覚ましいものがあります。農林水産業だけでなく、鉱工業やサービス業が発展。2023年に5.05%だった経済成長率は、2024年には政府目標を上回る7.09%を記録。国民1人あたりのGDP(国内総生産)についても、政府目標を1年前倒しで実現させています。

 日本企業の進出も目立ち、拠点は2300以上。サプライチェーンの要として、ベトナムは重要な地位を占めるに至っています。また、日本人の旅行先としてもベトナムは大人気です。デジタル旅行プラットフォームの「アゴダ(Agoda)」によると、日本人の人気旅行先(2024年)としてベトナムは、韓国、タイ、台湾、米国に次いで5位。観光・リゾート地として定着しています。

 そうした状況を見ていると、戦争の惨禍を忘れがちになりますが、ベトナムの大地は1970年代まで20世紀最悪とも言える戦争の舞台でした。

 では、最大約300万人が犠牲になったとされるベトナム戦争とは、いったい、どのようなものだったのでしょうか。