いざ、年金事務所へ!
5月1日の12時半。筆者はAさんとJR蒲田駅の改札で待ち合わせをした。これから年金事務所に行くのだ。
「USA」とプリントされたキャップ帽、メジャーリーグ風の赤と青のスタジャン、骸骨がプリントされたGパンをはいた痩せた体。これがAさんである。
一体どこで買ったのだろうという服装だが、年金事務所に乗り込むには、この上なく相応しいスタイルにも思える。帽子と黒マスクを外すと、頭のはげた、頬のたるんだおじいさんなのだが。
年金事務所の予約は14時だった。とりあえず、腹を空かせたAさんにラーメンを奢る。
「いやあ、生き返りましたよ。レモンティーしか飲んでなかったから」
Aさんはラーメンセットの半ライスに、ラーメンの汁をドバっとかけて、欠けた前歯でむしゃむしゃと食べている。
年金事務所は蒲田駅から徒歩10分ほどのビルの3階にあった。事務所の壁に刻まれた「年」というロゴマークが、なんだか眩しい。待合室で待機していると、10分ほどで個人ブースに案内される。出てきた担当の初老の女性に、いきなりサクっと言われた。
「Aさんは64歳ですので、既に『特別支給の老齢厚生年金』を受給できます。受給してください」
なんとAさんは、厚生年金の受給開始年齢引き上げによって設けられた制度「特別支給の老齢厚生年金」の受給対象だった。この制度によりAさんの場合は、64~65歳の1年間だけ特別支給がある。しかしAさんは年金事務所からの書類を無視して、申請をしていなかったのだ。
「え、これもらえるの?」
Aさんの特別支給額は年50万円ほど。Aさんはあっさりと年金をゲットした。