配膳ロボ、問題は酒類を出すお店

「とにかくどの店も人手不足が深刻化しています。それで昨年タブレットオーダーシステムを一式導入しました。費用はタブレット1台約10万円。当店は約150席あるので関連工事も含めて全体で約600万円かかりましたが、アルバイトを雇うと年間1人あたり200万円ほどかかりますから安いものです。

 省力化のためにお冷や(冷水)とおしぼりもセルフにしました。店員がお冷やを客席に運んで『いらっしゃいませ』とあいさつし注文をお伺いすることが一種の“おもてなし”のように思われていますが、夜の団体さんはお冷やを運んでも最初からビールで乾杯、というケースが多いのでお冷やは無駄になってしまいます。

 お冷やをセルフにすることで店員と客席を往復する手間が1ステップも2ステップも省けます。しかもタブレット注文にすることで店員によるオーダーミスが少なくなりました。日本語がまだ不慣れな外国人スタッフの負担も軽くなります」

 タブレット端末を導入することで注文業務の負担が大幅に軽減され、下膳や食器洗いなどの業務に時間を回すことが可能となる。しかも、売り上げ集計だけでなく、客が来店した時間帯と注文メニューの相関関係や、売れ筋メニューの分析など今後の商品開発に利用できるデータを収集することができるのだ。飲食店のデジタル化によってデータを収集しマーケティングに活用できるというメリットは大きい。

 人手不足対策としてロボットの導入も進んでいる。大手外食チェーンのガストに行くと猫ロボットが通路を走り回り、子どもたちが大喜びなのだが…。

「私は導入に賛同できません。コスト的には1台200万円ほど。アルバイト1人雇うよりはるかに安価です。走り回る経路を覚えさせるため複雑なプログラミングが必要のようにも見えますが、通路を覚えさせるのは実は簡単で要はプログラミング通りに動けばいい。

 問題は酒類を出すお店です。酔った客が動き回るロボットとぶつかって癇癪を起こし、回し蹴りを食らわす事態も想定しなくてはいけません」

 配膳ロボット導入の可否については酔った客の想定外の行動まで考慮しなくてはならないようだ。

配膳ロボットが活躍するのは日本だけではないようだ。写真はイタリア(写真:Stefano Mazzola/Shutterstock.com)