超人手不足と食材の高騰をどう乗り切るか

「フルカラーの大型メニュー表を大量にそろえられるのは体力のある大手です。当店ではカラーメニュー30部で約100万円のコストがかかりました。商談が成立するとカメラマンがやってきてメニューを撮影しそれから製本します。メニュー表の耐用期間は1年ほどでしょうか。現状、メニュー表は売り上げを伸ばす重要なアイテムなので導入していますが、将来的にはタブレットに一本化するかもしれません」

 超人手不足と食材の高騰など外食産業を取り巻く経営環境が厳しさを増す中、滋野社長が描く今後の経営のカギはトータルコストの問題だという。

「タブレット注文は便利ですが、実は来店客が不注意で床に落として破損させてしまうケースがあります。業務用端末は家電量販店や通販で売っているものとは異なり1台あたり10万円もしますから破損は極めて痛い。弁償させるわけにもいかないので、店側が泣き寝入りするしかありません。

 そこで当店でもタブレットを徐々に減らし、来店客の私物であるスマホ注文に切り替えようと思っています。メニュー価格を現状維持するためにはさらなるコストカットがどうしても必要なのです」

 長らく来店客による手書きオーダーを続けてきたサイゼリヤは、2024年8月にセルフレジの導入を全店舗で完了し、スマホによるモバイルオーダーを拡大中。年内にスマホオーダーに完全移行する目標を立てている。

 来店客の私物を利用するとなれば、接続フリーWi-Fiの店内整備や全席電源コンセントの配置など、客への配慮は不可欠のはず。それでも、店内のコンセントを客に使わせない外食店も多いため「なぜ客に負担を強いるのか」との批判がくすぶるのも無理はない。