③休憩所2(設計:工藤浩平)
設計者:工藤 浩平 工藤浩平建築設計事務所/Kohei Kudo & Associates/主用途:休憩所、トイレ/階数:2階建/延床面積:504.23m2/構造:木造(建築物)、鉄筋コンクリート造+鉄骨造(工作物)

【設計コンセプト】
休憩所2では、仮設建築物を万博会期の半年間という短い時間の単位で考えるのではなく、人類や地球といった、なにかもっと原始的で壮大なスケールの時間感覚でつくれないかと考えています。石は、何万年という月日を経て地球が創り出してきた「大地の資源」です。大阪城にも使われた瀬戸内産の石を、会期中は空へと持ち上げ、日除のパーゴラとして活用します。会期後は大阪湾の窪地の改善や海の生き物の居場所となるよう、石を海へと還元し、「海の資産」として未来へと引き継いでいきます。大地、空、海をまたぎながら、何万年も前の過去から、何万年先の未来へと時間をリレーする石の仮設建築物を設計します。


開幕前にSNSで大きな話題になっていたプロジェクトだ。筆者のようなおじさん世代は完成イメージ図を見て、「ああ、これはリスボン万博(1998年)のポルトガル館の系譜だな」とピンと来た。設計はポルトガルの巨匠、アルバロ・シザ。屋外広場を覆う80mの大スパンの屋根が、PC鋼線を入れたプレストレストコンクリートの板で出来ており、両サイドの建物の上部から吊られている。本来は重いものが軽々と空に浮かんでいる、という空間体験だ。(どんなものか知りたい方はYouTubeにあるシザのインタビューを)
この休憩所がそういう狙いであるとするならば、「重いものを軽く見せる」ということには成功している。下から見上げても重さを感じない。
ただ、残念なのはそれにからみつく緑だ。見た瞬間に「フェイクグリーン」だとわかる。それによって、肝心の石も擬岩に思えてしまう。柱の足下の緑は本物なので、設計者は下から伸びるのを待つつもりだったのかもしれない。SNSで騒ぎが大きくなったための配慮なのだろうか。オーセンティシティ(真正性)が薄れてしまったのが残念だ。
構造上の安全については、万博の場で実現しているという時点で大丈夫だろう。以前に「森になる建築」(設計・施工:竹中工務店)でも書いたが、仮設建築物であっても建築基準法第20条(構造強度)については安全性の確認が求められる。工作物も然り。強度データをとって検査を受けているはずだからだ。
ただ、それでも「危ない」という声が上がるのは予測がついたと思う。相当の安全率を見て設計しているのだとは思うが、フェイルセーフとして吊り材を複数にするなどの対応があり得たのではとも思った。
石は、現代建築では未開拓な素材だ。ここでの経験を無駄にせず、石のアーチとか石のドームとか、次なるチャレンジに挑んでほしいと思う。
