「本来圧力をかけるべきハマースに圧力をかけるというのはどうだろう。ハマースが合意に署名すれば、人道支援が自由に流れることになろう。そうすれば、我々すべてにとって喫緊の課題である人質の解放も実現されよう。支援を必要としている人々に支援が届かないようにハマースが支援を収奪したり、パレスチナ人を欺くこともなくなろう」

 一方、4月25日、ネタニヤフ首相と電話会談を行ったトランプ大統領は、ネタニヤフ首相にガザに食料などの支援が届くように伝達したことを明らかにして、「ガザに対してよくしなければならない。人々が苦しんでいるのだ。食料や医薬品を届ける必要がある。(支援物資について)我々が面倒をみている。」と発言しています。この機内でのインタビューを聞くにつけ、ガザの人道状況が危機的なことをトランプ大統領自身もよく理解していることがよく分かります。

 ウクライナ戦争におけるロシアとウクライナの交渉、イランとの核交渉のいずれにおいても、これ以上、地域紛争において血を見ることを極力回避したいというトランプ大統領の気持ちは、ガザにおいてもよく当てはまるということなのでしょう。

カタールとエジプトはどう動くか

 強硬な立場をとり続けるイスラエルに対する、このような米国の硬軟織り交ぜた外交に加え、ガザ問題に関しては地域諸国の実際的な動きからも目が離せません。カタールとエジプトという主要アラブ2カ国の仲介によって、ハマースとイスラエルが双方の立場を埋めんとの外交努力が鋭意継続されていることも確かです。

 焦点は、ハマースから見れば、イスラエル人人質の解放と引き換えに一層多くのパレスチナ人囚人をイスラエルの牢獄から解放し、イスラエルに恒久的な停戦にコミットさせ、ガザから撤退させることができるか、ということになります。逆に、イスラエルから見れば、恒久的な停戦にも、ガザからの撤退にもコミットせずに、残りの人質を一刻も早く解放できるかということです。

 ハマースからすれば、現在、生存しているイスラエル人の人質は24人とされていますが、彼ら全員をイスラエルに引き渡してしまえば、イスラエルに対するハマースのレバレージを失うことになります。その結果は、イスラエル軍によるハマースの殲滅です。そう考えるならば、ハマースはそれほど簡単に人質を解放できるわけではないでしょう。