リベラルvs保守、有力候補の人物像

 タグレ氏は「アジアのフランシスコ」とも呼ばれ、前教皇の方針を踏襲すると見られる。同性愛者や未婚の母などにも寛容であるべきとの立場を取る。選出されれば、アジア人初の教皇となる。しかし2022年、フランシスコ教皇がカトリック慈善団体指導部を解任した際、同氏も会長の座を退かされている。団体内における職員へのいじめなどの告発があったとされる。

 他方、エルドー氏は離婚者や再婚者、それに難民などに厳しい立場を取る保守派である。特に難民に関してはフランシスコ教皇とは真逆の立場を取り「難民受け入れは人身売買と同様」と発言したこともある。その上、欧州域内で独裁的な政治を続け、3月にはLGBTのパレードを禁じる法案を可決したハンガリーのオルバン政権との近さもささやかれている。

生前のフランシスコ教皇=死去前日の4月20日(写真:AP/アフロ)

 フランシスコ教皇が選出された2013年、米国は初の黒人大統領だったオバマ氏が、またドイツは後に大量の難民受け入れを行ったメルケル氏が国家元首だった。世界の分断の象徴のようなトランプ氏が大統領に選ばれるなど、誰もが思ってもいなかった頃である。

 欧米で極右が台頭する今年、聖職者による未成年者などへの性的虐待など、未解決の問題も抱えるバチカンがどのような路線を進むのか、コンクラーベの行方が注目される。

 こうした中「期待される教皇像」を考える上でのヒントを、ある映画に見出すことができる。