さらに、2018年4月、李氏は青瓦台訪問直後から、イースター航空のみならず、中小ベンチャー企業振興公団職員まで動員し、文元大統領の娘・ダヘ氏の家族が生活するタイの住居地やダヘ氏の息子が通う国際学校の情報を収集。青瓦台の民政秘書官と民政秘書官室特別監察班長を通じ、これら情報をダヘ氏夫婦に提供し、中小ベンチャー企業振興公団の現地職員を使ってダヘ氏の訪タイ時の送迎やガイド、通訳の手配までしたという。

文在寅氏と娘のダヘ氏(写真:YONHAP NEWS/アフロ)

 検察は、こうした過程において、大統領親族の管理・監察を担当する民政秘書官室・民政秘書官と特別監察班長が動員され、李氏とダヘ氏夫婦の間の連絡係となっていた事実も把握している。

捜査には極めて非協力的

 これらの証拠から、検察はソ氏の特恵採用を「李氏による文元大統領への賄賂」と認定。ソ氏が受け取った給与および生活費計2億1700万ウォンを、「文元大統領が得た賄賂額」と見なしている。

 なお、ソ氏がITベンチャー企業を辞めた後、ダヘ氏は文元大統領から生活費の支援を受けていたが、ソ氏が再就職したことでその支援は中断された。検察はこれを、ソ氏の再就職によって文元大統領が経済的利益を得たとする論拠にしている。

 検察は今回の事件を、公務員が地位を利用して賄賂を受け取った典型的な事例と断じる。2024年には、国土交通部のある公務員が李相稷氏所有のイースター航空に娘の就職を依頼した疑いで懲役1年・執行猶予2年を言い渡されたが、このケースよりも文元大統領の賄賂額ははるかに大きい(2億ウォン超)。