公団内部では、理事長公募の前から李氏の内定説が流れており、「大統領秘書室の指示で面接用の模範解答を作成し、送付した」という内部証言も確保されている。

文在寅氏の娘一家を厚遇

 また、李氏が所有する「イースター航空」は中小規模のLCC(格安航空会社)でありながら、2018年3月の平壌訪朝芸術団のチャーター機に選ばれた。その後、イースター航空は北朝鮮向けチャーター便事業に乗り出したが、国連制裁下にあるこの事業はリスクが大きいため、数千億ウォン規模の保険加入が必須とされ、韓国政府がイースター航空の信用保証を決定した。この支援も、国会同意を経ず文在寅政権が単独で決めたものである。

 2020年1月、李氏は公職選挙法違反の捜査を受けていたが、「免職」を申し出、中小ベンチャー企業振興公団理事長を辞任。その後、共に民主党から公認を受け、全州乙選挙区で国会議員に当選した。検察は、検察の捜査中に迅速になされた免職申請の受理と国政選挙出馬の裏にも文元大統領の便宜提供があったと見ている。

 こうした数々の便宜の見返りとして、李氏は文元大統領の婿・ソ氏の特恵採用を行ったのだと検察は主張している。

 ソ氏が採用された当時、タイ・イースタージェットは航空運航証明や航空免許取得が遅れ、収入ゼロで緊縮運営中だったため、役員を採用する状況ではなかった。それにもかかわらず、航空業界での経験が全くないソ氏を「月給800万ウォン・常務職級・住居費支給」の好待遇で採用することを現地運営者に指示したという。しかも、支給された住居は月額賃料350万ウォン超の高級マンションだった。