性風俗を卒業する女性に多いきっかけ

──性風俗を卒業する女性のきっかけの多くが「信頼できる男性との出会い」であると書かれていました。彼女たちの多くは、その後、その男性と結婚して家庭を築いています。他者を信頼して性風俗から抜け出せる人には、どのような特徴があるのですか。

坂爪:他者を信頼できる人は自分を信頼できる人です。自分で自分を大事にしているからこそ、「自分が相手から大事にしてもらえている」と気付くことができます。

 けれども、性風俗の世界では、自分を大事にしない人のほうが短期的にはお金を稼げてしまうという現実があります。一方で、自分を大事にできないままだと、長期的には心身がすり減っていくだけで卒業もできません。

──「やめる理由を手に入れることができた人たちがやめられる」という当事者の言葉もありました。

坂爪:これは、「やめる理由」というよりも、「やめたい」という気持ちを本人がきちんと自覚できたからこそやめることができたのでは、と私は考えています。

 性風俗の世界には、自分の感情を自覚できない、もしくはしたくない、という女性が多くいます。彼女たちは、心の奥底では「やめたい」と思っているけれども、それにフタをして働き続けています。

 気持ちにフタをしてしまう理由はさまざまです。金銭的な理由の人もいれば、他に仕事がないからという人もいます。中には「自分には、性風俗以外にできる仕事はない」と思い込んでしまい、自己否定のような状態に陥っている人もいます。

 けれども、そういった呪縛から抜け出して、「やめたい」という気持ちが浮かんできたときに、それにフタをせずにきちんと自覚をすることが性風俗を卒業する第一歩なのだと思います。

──性風俗の仕事について、「曖昧」というキーワードで説明をしていました。