夜職から抜け出しやすい人の特徴
坂爪:性風俗の世界では、長期的なビジョンや目標を持って、「いつまでにいくら貯めよう」という目標を決めている人は、決して多くありません。
そういった人に対して、「目標を設定しましょう」と上から目線で言っても、効果はないでしょう。
目標を設定しないことも、彼女たちにとってはメリットの1つなのかもしれないと感じています。過去の記憶や未来の不安を考えないようにして、今現在の目の前にある課題に集中したほうが生きやすいという人も少なくないと思います。
ですので、ただ上から目線で「目標を設定しよう」と伝えるのではなく、「目標を設定したほうがあなたにとってメリットがある」ということを、当事者が実感できるようなかたちで伝えていく必要があります。
同じような環境で、性風俗からの卒業に成功したロールモデル(お手本)となる人がいれば、「あの人は、このくらいの期間でいくらお金を貯めて、こんなに充実した第二の人生を送っているよ」と説明することは容易だと思います。
ただ、ここで問題になるのは、そうしたロールモデルとなりうる人が身近になかなか存在しないという点です。
──夜職から抜け出しやすい人の特徴として、同業の女性とあまり関わらないという点を挙げていました。一方で、ロールモデルとなる人を見つけるためには、ある程度、同業の人とのコミュニケーションが求められるため、ジレンマが存在しているように感じられます。
坂爪:おっしゃる通りです。ただ、同業の人との接点が少ない人のほうが、夜職から卒業しやすいというのは事実です。
それは、裏を返せば「昼の世界との接点が多い人」ということです。昼の世界との接点が少なければ少ないほど、夜職を卒業しにくくなってしまいます。
──昼の世界と接点を持ち続けられる人と、そうでない人には、どのような違いがあるのでしょうか。
坂爪:性風俗の仕事やその界隈の仲間以外に頼れる相手や居場所、出番となる機会があれば、性風俗だけに依存しなくても済むはずです。ただ、家庭環境が悪い、友人が少ない、昼の仕事になじめないなどの理由があると、どうしても昼の世界との接点は少なくなってしまいます。