(小林偉:放送作家・大学教授)
レジェンドたちの“新人時代”
新年度が始まって早1カ月が過ぎようとしています。3月に学校を卒業し就職した、いわゆる“新社会人”の皆さんにとっては、さぞかし長く感じた1カ月だったのではないでしょうか?
近年の厚生労働省の統計によると、大卒新社会人の入社1年以内での離職率は12.2%と、10人に1人以上が会社を辞めているそうです。中には入社3日以内という剛の者も少なくないそうですから大変です。さらにこれが入社3年以内となると34.9%。実に3人に1人が退社している計算。最近は、会社側による様々なハラスメント対策などが進んでいる状況にあってのこの数字は、厳しいものと言わざるを得ません。
一方で新人側にとってみれば、入社前には分からなかった社内の人間関係や、具体的な労働環境とのギャップに耐えられなくなって・・・というのも、3回の転職を経験している筆者にとって共感できることではあります。
いまやベテラン社会人である会社の上司や先輩たちも、誰もがかつて新人であって、様々な経験を経て、現在に至っているワケです。そして順風満帆に、幸せな社会人生活を歩んできたなんて方は稀だとも言えます。
そこで今回は“新社会人”の皆さんへのメッセージも込めて、音楽ファンの筆者から、今では世界的なアーティストであるレジェンドたちの“新人時代”の曲にスポットを当ててみたいと思います。題して「誰もが皆、新人だった」。
まずは20世紀、否、史上最大のロックバンド・ビートルズから行ってみましょうか。
ビートルズのデビュー曲はこの『ラブ・ミー・ドゥ』という曲ですね。1962年10月のリリースです。ファンの間ではよく言われることなんですけど・・・ご存知の通り、この後、たくさんの名曲を残したビートルズにしては地味な曲じゃないですか? 他に候補として考え得る曲はあったと思うのですが・・・。
ちなみにリード・ヴォーカルはポール・マッカートニー、印象的なハーモニカを吹いているのはジョン・レノンですが、可哀想なのはドラムのリンゴ・スター。彼の演奏にプロデューサーが満足せず、アンディ・ホワイトというスタジオミュージシャンが代役として叩き、リンゴはタンバリンを叩かされています。彼がこの時点で「辞めてやる」となっていたら、音楽の歴史は変わっていたかも。また、記念すべきデビュー曲であるにもかかわらず、後にほとんどライヴで取り上げなかったことからも、彼らにとっては、ちょっとした“黒歴史”だったのかもしれませんね。