2024年12月31日に放送する「第75回NHK紅白歌合戦」に初登場するME:I

(小林偉:放送作家・大学教授)

「紅白」誕生の経緯

 今年で第75回を数えるNHK紅白歌合戦。その原点は終戦の年=1945年の大晦日、太平洋戦争が終わってまだ4カ月半という時期に放送された「紅白音楽試合」というラジオ番組でした。剣道の紅白戦にヒントを得て、紅組白組に分かれ音楽を披露するというものだったそうで、歌以外にも尺八や木琴などの演奏もあったとか。しかし、終戦直後ということもあり、勝敗を決めるのはどうかという論議となり、審査員などは置かず、勝ち負けのない「試合」だったそうです。

 これが好評を博したのですが、その後「紅白音楽試合」が放送されることはありませんでした。そして1950年、5年前の反響が忘れられなかったスタッフの熱意により、翌1951年の正月ラジオ特番として「第1回NHK紅白歌合戦」が1月3日に放送。以降、1953年の第3回まで正月3が日中に放送されていましたが、同じ年の大晦日には第4回として、ラジオに加えテレビ放送も実施。これ以後、大晦日の風物詩として定着していったというわけです。

「紅白」の視聴率モンスター化

 テレビ放送の視聴率調査が本格的にスタートしたのは1962年。その翌年=1963年12月31日の「第14回NHK紅白歌合戦」の世帯平均視聴率(関東地区)は何と81.4%。これは現在に至るまで破られていない国内全テレビ局の史上最高視聴率となっています。ちなみに、この第14回に初出場したのが、当時27歳だった北島三郎でした。

 以来、「紅白」はほぼ毎年、年間最高視聴率を記録、1985年までは60%以上を常に叩き出すという“モンスター番組”となります。1989年からは開始時間を2時間程度早め、2部制に移行。それでも1部が40%前後、2部が50%超と依然高視聴率をキープし続けていました。この勢いに陰りが見え始めたのが2000年。この年初めて2部が50%を下回ります。そして2004年には40%を切り、以後はほぼ横ばい状態。以下に過去10年間の視聴率の推移を記しますと・・・。

年        1部        2部
2014    35.1      42.2
2015    34.8      39.2
2016    35.1      40.2
2017    35.8      39.4
2018    37.7      41.5
2019    34.7      37.3
2020    34.2      40.3
2021    31.5      34.3
2022    31.2      35.3
2023    29.0      31.9

 ・・・という具合に1部が30~35%、2部が35~40%程度で推移していたのですが、昨年、1部が初めて30%を切るなど、一気に退潮傾向に拍車がかかりつつあります。