近年の「紅白」テコ入れと2024年の戦略
さて、こうした現状に「紅白」側はどう抗ってきたのでしょうか? 当然ながら、そこには幾つかの作戦が浮き彫りになるように思います。以下、筆者なりにその作戦を紐解いてみると・・・
①旧ジャニーズ頼り
2009年頃から女性に人気の高い旧ジャニーズ事務所(現・STARTO ENTERTAINMENT)の歌手・グループの出場を増加させる作戦。一昨年までは毎年5~6組を出場させた他、嵐のメンバーが2019年までほぼ毎年、司会を担当するという厚遇ぶりでした。しかしご存知の通り、故ジャニー喜多川元社長の性被害問題が浮上し、昨年は出場ゼロ。その影響が少なからず視聴率にも表れていたとも言えます。引き続き、今年もゼロですが、旧所属のNumber_i(元King&Princeの3人が在籍)が復活したのが、僅かでも浮上のキッカケとなりますかどうか・・・。
②多国籍化
近年は、サラ・ブライトマン、キッス、クイーンなどの海外大物アーティストを次々と登用。さらに東方神起、KARA、少女時代、TWICE、IVE、LE SSERAFIMなどのK-POP勢の起用が激増しています。今年もTWICE、LE SSERAFIM、ILLIT、TOMORROW×TOGETHERと4組が出場。この点にはネットを中心に賛否ありますが、ここまで起用を続けるには、「紅白」側に確かな勝算があるものと推察されます。
③ “ロイヤル・カスタマー”対策
世代別に商品戦略が練られるマーケティングが進んだ現在、音楽の世界でも、一定の年代をターゲットにした商品化が行われています。そのためターゲットから外れた年代には「コレ、誰?」化現象が起きます。特に“ロイヤル・カスタマー”と呼ばれる50代以上の、最もNHKと親和性の高い層にコレが起きがち。そこで「紅白」出場者にも、この層への配慮が毎年行われています。
今年、そこに当てはまりそうなのが、41年ぶり2回目の出場となるTHE ALFEE、32年ぶり2回目のイルカ、27年ぶり6回目の南こうせつ、25年ぶり2回目のGLAYといった方々でしょうか。公共放送としてのNHKならではの姿勢ですが、そもそも視聴者数の最も多いこの層への配慮は、視聴率対策として最も良策かも・・・。
④隠し玉
毎年11月下旬の出場歌手発表の後、“特別企画”などの名称で、大物アーティストの出演が追加で発表されます。近年では、矢沢永吉、井上陽水、玉置浩二、竹内まりや、サザンオールスターズ、米津玄師などなど。放送日直前になって発表されることが多いため、サプライズ的な番組の“隠し玉”となってきました。
その効果が最大限に発揮されたのが2018年。この年は、直前に米津玄師とサザンオールスターズの出演が発表。さらに番組の最後、サザンオールスターズの“特別企画”時には、これも超大物・松任谷由実の“乱入”もあり、大盛り上がり。視聴率を41%台にまで上げる起爆剤ともなりました。今年もこうした“隠し玉”はあるのか? 共に今年放送の「朝ドラ」主題歌を担当した米津玄師、B’zなどが噂にはなっていますが・・・。
以上、「NHK紅白歌合戦」のこれまでの経緯と戦略についてお話ししてまいりました。
例年ですと、12月中旬頃から“特別企画”などの追加出演者が発表。それが放送日の直前、27日に及んだこともあります。
今年のテーマは「あなたへの歌」。それぞれの年代の皆さんに届く歌の伝い手がどんな形で登場するのか、楽しみにしていましょうかね。
