年間260万人以上が訪れる高尾山は「自然の宝庫」
9時半。標高599mの山頂にはすでに多くのハイカーや行楽客がいた。桜はほぼ散っている。山頂標識の前でセルフ写真を撮ろうとしているとシニア夫婦が「撮りますよ」と声をかけてくれ、記念撮影。お返しにお二人の写真も撮影した。気持ちのいい青空の下、和やかな雰囲気である。
山頂展望台からは丹沢山塊を望むことができるが、富士山はモヤっていて見えない。富士山を見るには大気が澄んでいる冬場に限るか。

今回は裏高尾・一丁平の桜を見に行こうというのが目的。高尾山頂から長い下りの石段を下り、5号路と交わるポイントに。緩やかな坂道を進むともみじ台に到着。秋はモミジの紅葉が美しい所だ。
もみじ台からは長い、長い木製の階段を下りていく。帰りの登り返しを考えるとうんざりしてしまう。階段を下りきると正面に階段の道、右に巻き道があり、桜の下の巻き道を進む。この道を行くハイカーの数は少ない。ツツジがピンクの花びらを咲かせている。道には頭上から舞い落ちてきた桜の花びらが点々と続く。風情のある山歩きだ。

やがて目的地の一丁平に到着。高尾山の山頂から1時間ちょっと。筆者は昨年膀胱がんが発覚し、秋に膀胱を全摘出。それからは初めての山歩きだ。膀胱の原発がんはなくなったが、肺には転移した腫瘍があるので登りは超スローペースになる。下りも大腿の筋力がガクンと落ちたので、これまたのんびりとしか進めない。それでも安心・安全を心がけマイペースで目的地までやって来た。感無量である。
楽しみにしてきた桜は多くの木で散り去ってしまい、残った木も散り際の美学といった雰囲気だ。それでも残ったピンクの花びらを愛でながら、草地にシートを敷いてランチタイムにする。本日は自宅で作ってきた弁当。牛肉セロリ炒め、卵焼き、ひよこ豆のサラダの詰め合わせ。ご飯には梅干しと焼きたらこのふりかけを。暑くなりそうだったのでミニクーラーボックスに保冷剤と一緒に入れてきた。
大きな桜の木の下で食べる弁当は実にうまい。周りを見回すと50代の夫婦はガスバーナーにメスティン(アルミ製の飯盒)をかけて焼肉とビールを楽しんでいる。幼稚園児ぐらいの女の子と母親の2人連れはおにぎりとサンドイッチのランチタイム。それぞれがアウトドアライフを自由に楽しんでいる。

ランチは弁当持参ならすぐに食べられるし、食材を持参して山で調理するのも楽しい。これからの時期は暑さで傷みやすいので保冷剤とクーラーボックスは必需品だ。

昼食後はザックを枕に昼寝タイム。帽子で顔を覆い、足を伸ばして寝そべる。桜の花びらが舞い散る様子を思い浮かべながら、鳥のさえずりを聴き、いつの間にか寝入っていた。20分ほど寝ただろうか。気持ちがいい。さあ、あとは登ってきた道を慎重に下っていこう。
1600種類以上の植物、25種以上の哺乳類、70種以上の鳥類などが生息する高尾山はまさに自然の宝庫。年間260万人以上の人々が訪れ、そのナチュラルパワーを満喫している。多くの人が訪れるだけに、混雑を避けマイペースの山歩きを楽しむためには、早出が必須条件となる。早起きは三文の徳なのだ。
山頂までの往復であれば3時間程度、一丁平や小仏城山まで足を延ばせば5~6時間程度の山歩きを楽しむことができる。低山とはいえ随所に危険がある。しっかりした登山靴、長袖長ズボン、首を覆うタイプン帽子など装備は怠りなく。
ノースリーブや短パン姿の外国人女性を見かけたが、こんな軽装では足を滑らせて転べばケガをするのは避けられない。山を甘く見てはいけない。
