エレキテルの失敗で狂気に陥った平賀源内

 今後の展開としては、蔦重のプロデュースが本格化していきそうだが、少しずつ田沼意次が失脚する時期も近づいている。松平定信へと老中が変わったときに状況が一変するだけに、幕府パートの動向も見逃せない。

 また、気になるのが平賀源内の変貌ぶりだ。ひょうひょうとした雰囲気はなくなり、すっかり怒りっぽくなってしまった。復元したエレキテルが医療機器としては役に立たず、単なる見世物で終わったことや、偽物が出回って自分の評判を落としていることに堪えがたい感情が湧き上がってきたらしい。

 今回の放送の冒頭では、自分の悪口を言われていると思い込んでは、通行人にいちゃもんをつけて、斬りつけようとした。その姿は狂気そのもので視聴者に強いインパクトを与えた。蔦重は変わりゆく源内にどんな思いを抱くのだろうか。

 次回は第16回「さらば源内、見立は蓬莱(ほうらい)」。蔦重のもとに「源内が人を斬った」という衝撃的な知らせが届く。

【参考文献】
『田沼意次 その虚実』(後藤一朗著、清水書院)
『田沼意次 御不審を蒙ること、身に覚えなし』(藤田覚著、ミネルヴァ書房)
『蔦屋重三郎』(鈴木俊幸著、平凡社新書)
『蔦屋重三郎 時代を変えた江戸の本屋』(鈴木俊幸監修、平凡社)
『探訪・蔦屋重三郎 天明文化をリードした出版人』(倉本初夫著、れんが書房新社)
『平賀源内』(芳賀徹著、ちくま学芸文庫) 
『平賀源内 「非常の人」の生涯』(新戸雅章著、平凡社新書)

【真山知幸(まやま・ともゆき)】
著述家、偉人研究家。1979年、兵庫県生まれ。2002年、同志社大学法学部法律学科卒業。上京後、業界誌出版社の編集長を経て、2020年より独立。偉人や名言の研究を行い、『偉人名言迷言事典』『泣ける日本史』『天才を育てた親はどんな言葉をかけていたか?』など著作50冊以上。『ざんねんな偉人伝』『ざんねんな歴史人物』は計20万部を突破しベストセラーとなった。名古屋外国語大学現代国際学特殊講義、宮崎大学公開講座などでの講師活動も行う。徳川慶喜や渋沢栄一をテーマにした連載で「東洋経済オンラインアワード2021」のニューウェーブ賞を受賞。最新刊は『偉人メシ伝』『あの偉人は、人生の壁をどう乗り越えてきたのか』『日本史の13人の怖いお母さん』『文豪が愛した文豪』『逃げまくった文豪たち 嫌なことがあったら逃げたらいいよ』『賢者に学ぶ、「心が折れない」生き方』『「神回答大全」人生のピンチを乗り切る著名人の最強アンサー』など。