コメ市場の譲歩はあり得るか?

 この中で②は各論の集合体であり、「譲れるところは譲る」という姿勢で臨むしかないのであろう。素人目線では、日本の安全基準やEV充電規格を修正するだけで米国車が日本市場で戦えるようになるとは思えないが、「譲った」という事実がギフトになるのであれば、それだけでも日本に意味がある。

 各論での譲歩を重ねて、どれだけ総論としての得点に結びつけるかという話になりそうだ。このあたりは実務家協議の範疇になる。

 次に、③はもっぱら米国産コメの輸入規制を緩和するという話だ。この話自体、短期的にはコメ価格の下落を促すため、社会問題化している感もあるコメ価格の高騰に対する一手として消費者的には歓迎される面もあるように思える。

 恐らく、飲食店を含む加工業者のコストも下がり、外食価格の押し下げにもつながってくる可能性がある。その意味では、政治的・社会的には譲歩の可能性を指摘する声が出てきやすい雰囲気はある。

 だが一方、インフレ抑制という短期的なメリットはあるとしても、中長期的なデメリットもある。仮に大規模かつ機械化が進んだ米国農家と価格競争を強いられた場合、小規模かつ高コスト構造の日本の農家は苦境に追い込まれるという懸念は常に残る。

 折しも後継者不足で放っておいても離農が進むような状況にあるため、こうした懸念は切迫感を帯びている。国産のコメが米国産のコメに駆逐されるような状況に至り、ただでさえ低い食糧自給率がさらに押し下げられるような展開は食糧安全保障の観点から看過できない。

 これまで日本政府は国内のコメ市場を幾度も防衛してきた。その結果が700%を優に超えると批判される外国産米への関税率である。

 例えば、1993年に合意し、1995年に発効したウルグアイ・ラウンドでは「ミニマム・アクセス(MA)米制度」を導入して難局を乗り切っている。