自由貿易体制が経済のグローバル化を後押し

 税率は商品の輸入価格に対する金額として表示され、納付の義務は輸入業者が負っています。

 例えば、パソコンにかかる関税が50%であれば、パソコン1台を10万円で輸入する業者は5万円の関税を自国の国庫に納付しなければなりません。米国では、ごく最近になって「関税は輸出国の政府や業者が米国に収めるものだと思っていた」というトランプ支持者が大勢いたと話題になっていますが、関税を負担するのは輸出国側ではないことに注意が必要です。

 関税の上げ下げには、さまざまなプラス・マイナスの効果があります。

 関税を上げると、輸入品の価格が上昇するため、その国内での価格競争力が落ちます。したがって、ある国からの輸出攻勢に対抗し、自国の産業を保護・育成したい場合は、その分野・商品の関税引き上げが有力な政策手段となり得ます。

 自国の農業を保護するために、農産品に高い関税をかける例がよく知られています。また、関税の対象となった国の産業は、輸出戦略や事業計画の見直しを図る必要に迫られるでしょう。

 ただ、戦後の世界経済は米国や欧州が引っ張る形で、自由貿易体制の構築に努めてきました。古くは1947年に成立した国際協定「GATT(General Agreement on Tariffs and Trade、関税および貿易に関する一般協定)」によって、1995年からは世界貿易機関(WTO)によって、関税の壁を低くしたり無くしたりする努力を継続。それが実り、世界経済のグローバル化は急速に進みました。

 各国は、過度な貿易摩擦を防止する目的で、ダンピング(不当廉売)に対する関税やセーフガード(緊急関税)などを設けることもあります。それも自由で平等な市場を設けるためという理念に基づいてのことでした。

 しかし、トランプ氏はWTOからの脱退を検討しているとされ、実際に現在はWTOへの米国の拠出金を一時停止しています。