税率は品目ごとに細かく設定

 トランプ政権が武器としている関税とは、どのようなものでしょうか。

 日本の財務省は、関税を「一般には輸入品に課せられる税」と定義しています。外国からの物品が商品として自国の領域に入る際(輸入時)、輸入国の政府が輸入業者に課す税金のことを指します。

 これとは逆に、自国の領域から海外へ商品が出ていく際(輸出時)、輸出国の政府が課す税金もあります。ただし、現代における主流は輸入関税であり、「関税=輸入品にかかる税金」と理解して差し支えはないでしょう。

 関税を課す仕組みはどのような法律で決まっているのか、日本を例にとって見ていきましょう。

 日本の関税は「関税定率法」と「関税暫定措置法」という2つの法律によって税率が定められています。「関税定率法」は長期に適用される基本的な税率を定めたもので、2025年4月現在、トータルで7663件の税率が設定されています。

実行関税率表」を見ると、品目ごとの税率は実に細かく設定されていることに驚くかもしれません。

 例えば、「塩及び純塩化ナトリウム(目開きが2.8ミリメートルのふるい(織金網製のものに限る。)に対する通過率が全重量の70%以上のもの及び凝結させたものに限るものとし、水溶液を除く。)」と規定された品目には、1kgあたり0.5円の関税が設定されている、という具合です。

 もう1つの「関税暫定措置法」はさまざまな事情により暫定的な税率を定めなければならないケースに対応したもので、現在は412件の税率が設定されています。このほか、途上国の発展を促進させるためといった理由で、国ごとに基本税率より低い関税を設定するケース(特恵)や無税とする例もあります。

 関税は国庫への歳入となるため、関税の引き上げは単純に税収増の効果ももたらします。もっとも日本の場合、関税収入の総額(2020年度)はおよそ8300億円。国税収入の1.3%に過ぎませんでした。