明らかになったロシアの対生成AI工作とは
今年3月6日、NewsGuard Technologiesという企業から1本のレポートが発表された。同社はオンライン上のニュースや情報の信頼性を評価するサービスを提供する企業で、独自の信頼スコアシステムを用い、各ニュースサイトの透明性や報道の正確性を評価。利用者が信頼できる情報を選択できるよう支援している。言うなれば、デジタル時代における「情報の真実を守る番人」といったところだ。
今回発表されたレポートには、「モスクワを拠点とした、資金力のあるグローバルな『ニュース』ネットワークが、世界中の西側のAIツールにロシアのプロパガンダを感染させた」というタイトルが付けられている。これが内容をほぼ言い切っているだろう。
「ニュース」という括弧つきの表記がなされているのは、もちろん、このネットワークが本物の報道機関ではないからだ。ロシア政府がオンライン上に立ち上げた、偽のニュースネットワークから発信されていたプロパガンダが、生成AIを汚染している実態が明らかになったというのである。
レポートの内容をもう少し詳しく見ていこう。
問題があるとして指摘されたのは、モスクワを拠点とする「Pravda(プラウダ、ロシア語で“真実”の意味)」と呼ばれるネットワーク。プラウダというと、ソビエト連邦時代に共産党から発行されていた公式機関紙が思い浮かぶが、それとはまったく関係がない。こちらはオンライン上で活動する偽情報のネットワークで、約150以上のサイトから構成されているそうだ。
同ネットワークは多言語での情報発信を行っており、2024年には年間360万件近くという、大量の記事が投稿されていたとのこと。平均して、48時間ごとに2万件以上の記事を投稿していた計算になるという。
各サイトは表面的には独立サイトのように見えるものの、実際にはロシアの情報戦略の一環として機能しており、発信される記事も当然ながらモスクワ寄りの内容となっている。SEO対策も施されていて、情報が広範囲に拡散していることが確認されている。