1拠点に簡易トイレは15個
新拠点1カ所あたりの平均数量を見ると、段ボールベッドと簡易ベッドはそれぞれ500個、パーティションは1000個を数えます。一方、簡易トイレは15個、シャワーや浴槽を備えるテント式の入浴資機材は5セット(男性用と女性用を合わせて1セット)、炊き出し用のキッチン資機材は5セットとなっています。
これらの整備を進めるため、政府は2025年度予算案に13.6億円を計上しています。ただ、上の図表を見た多くの人は、備蓄物資の数量に「少ないな」という感想を持つかもしれません。迅速に物資を送るために拠点を分散するとはいえ、1拠点で簡易トイレ15個、入浴資機材5セットといった量は、いかにも少ないように見えます。
一方、自治体の備蓄状況はどんな状況でしょうか。
能登半島地震を踏まえて内閣府が実施し、今年1月に公表した全国すべての都道府県と市区町村を対象とした調査結果によると、避難生活に不可欠な「簡易ベッド(段ボールベッドを含む)」は全国で約58万個、避難所で最低限のプライバシーを確保するための「パーティション」は109万個にとどまっていました。また、トイレについては、移動と設置が容易で衛生面でも優れているトイレカーは、全国でわずか37台しかありませんでした。
都道府県・市区町村別に見ると、「簡易ベッド」の備蓄ゼロは208に上ります。「パーティション」についても備蓄ゼロが317。「生理用品」も378がゼロでした。
都市部か山間部かなど地域の状況により、被災の想定は異なります。そのため、「簡易ベッド」「パーティション」などの備蓄ゼロをもって、ただちに災害への備えができていないとは言えません。ただ、この数字だけを見ると、大規模災害が発生すると、体育館や公民館などで簡易ベッドやパーティションもないまま、毛布にくるまって雑魚寝する光景があちこちで繰り返されそうです。
政府は新たに「防災庁」をつくることを決め、2026年度の設置に向けて準備を進めています。ただ、防災に必要なのはスピード。東日本大震災や熊本地震、能登半島地震などの経験を通じ、多くの国民は「備えが後手にならないように」と願っているはずです。
フロントラインプレス
「誰も知らない世界を 誰もが知る世界に」を掲げる取材記者グループ(代表=高田昌幸・東京都市大学メディア情報学部教授)。2019年に合同会社を設立し、正式に発足。調査報道や手触り感のあるルポを軸に、新しいかたちでニュースを世に送り出す。取材記者や写真家、研究者ら約30人が参加。調査報道については主に「スローニュース」で、ルポや深掘り記事は主に「Yahoo!ニュース オリジナル特集」で発表。その他、東洋経済オンラインなど国内主要メディアでも記事を発表している。




