5.米国が世界に基地を展開する目的
米国国防省2020年によれば、ドイツに119、ポーランドに4、ノルウェーに6、エストニア、日本に119(防衛省2024年資料130)、韓国に80の米軍基地が存在する。
世界には合計800近くあり、何十万人もの米兵が駐留していると記されている。
図5 米軍の海外展開基地(U.S. Military Bases Abroad,2020)
『BASE NATION―How U.S. Military Bases Abroad Harm America and the World』David Vine(2015)(監修:西村金一)には次のような記述がある。
「米国が海外に多くの基地を建設し、獲得したのは、第2次世界大戦の終結時や冷戦の初期だったが、それ以来、他の国々や他の人々の土地に米軍施設があるのは、当たり前のこととされてきた」
「在外の米軍基地の存在は、長い間、何の疑問もなく受け入れられ、米国の安全と世界平和のために明らかに有益で不可欠だと考えられてきた」
米軍基地は、具体的にはロシア・中国・北朝鮮やテロ組織に対し、備えるように展開している。
それらの基地は、その国々を守るため存在している。米軍が展開することにより抑止力となり、脅威となる国々の侵攻を抑え込んでいる。
しかし、同時に米国に到達することを阻止もしているのである。
さらに、海洋では海上交通路の安全を確保しているし、情報面ではその地域の軍の活動などの情報を収集して、米国に送信している。
米国が「欧州、日本など列島諸国、大洋州の防衛は、それぞれの国が責任を持ってやれ」と言うのは、米国がこれらの基地から撤退すると言っているに等しい。
だからといって、基地をそれぞれの国に返還するのだろうか。
米国は、これらの基地を返還し米国に帰ることはしないだろう。
なぜなら、これらの基地は、その国とともに敵国やテロリストを抑え込むことに寄与し、さらに米国の利益に繋がっているからだ。
トランプ氏が、「欧州のことは欧州が、アジアのことはアジア諸国が、テロ対策はテロリストがいる国が責任を持つべきであり、費用はその国が負担せよ」と言うのなら、米国軍は基地を返還して自国に帰るがよい。
その時には、間違いなく米国は孤立する。