欧州の国防支出を8000億ユーロ増やす

 EU全域で欧州の防衛技術・産業基盤を強化するため、欧州委員会のウルズラ・フォンデアライエン委員長はEU予算の未使用分を担保とする1500億ユーロの融資とEUの財政規則の柔軟性を高めることで6500億ユーロの新たな支出を可能にする計画を首脳会議に示した。

 ウクライナ戦争を教訓に防空・ミサイル防衛、精密誘導爆弾を含む砲撃システム、ミサイル・弾薬、無人航空機(ドローン)・ドローン迎撃システム、宇宙・重要インフラ防護に関連する戦略的手段、軍事機動性、サイバー、人工知能(AI)・電子戦の強化を優先する方針だ。

 EU首脳会議では、プーチンに近いハンガリーのオルバン・ビクトル首相はEU加盟国の国防支出を全部で8000億ユーロ増やす声明を支持せず、欧州の亀裂を露わにした。しかしオルバン氏の盟友であるスロバキアのロベルト・フィツォ首相は支持に回った。

 ドイツの次期首相になるキリスト教民主同盟(CDU)のフリードリヒ・メルツ党首はEU首脳会議に先立つ3月4日「欧州と世界の政治情勢はわずか1週間前の予想よりも速いペースで展開している」と国防費を憲法で定められた財政上の制約から除外する大胆な計画を発表した。

ドイツの次期首相でキリスト教民主同盟(CDU)のフリードリヒ・メルツ党首(写真:ロイター/アフロ)