次期ドイツ首相「どんなことをしても」国を守る

「私たちの自由と大陸の平和に対する脅威を考えると国防の合言葉は『どんなことをしても』でなければならない」。「どんなことをしても」というたった一言で欧州債務危機を鎮圧したマリオ・ドラギ欧州中央銀行(ECB)総裁(当時)の台詞を引用し、不退転の決意を見せた。

 メルツ氏は憲法を改正して構造的財政赤字を国内総生産(GDP)の0.35%に抑える上限規定から国防費を外し、1.4%に引き上げる方針を示した。姉妹政党のキリスト教社会同盟(CSU)と現在連立協議を行っている社会民主党(SPD)とも合意している。

 これで5年間に約2200億ユーロの追加支出が可能になる。憲法改正には緑の党、自由民主党(FDP)の支持も必要になる。CDU/CSU、SPDの3党は今後10年にわたり低迷するドイツ経済を刺激する産業・インフラ投資の特別基金5000億ユーロを新設することでも合意した。

「米国が今後も相互同盟の約束を守ることを期待している。しかしわが国と同盟の防衛資金は今こそ大幅に拡大されなければならない」と話すメルツ氏はオラフ・ショルツ独首相にウクライナに対する30億~35億ユーロの緊急支援も働きかけた。

「最優先事項はできるだけ早く欧州を強化し、段階的に米国からの真の独立を達成することだ」というメルツ氏は2011年に一時停止した徴兵制の復活を唱えている。

 ポーランドのトゥスク首相は地雷禁止条約からの脱退を支持し、50万人の軍隊(現在は約20万人)が必要だとして成人男子全員を対象とした軍事訓練を計画している。