フランス国内を移動する不法移民(写真:AP/アフロ)
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(永末アコ:フランス在住ライター)

反グローバリズムに足並みを揃える各国

 否が応でも、世界の中心にアメリカがある。トランプ氏が大統領になって、世界は再びそう思い知らされているのではないだろうか。トランプ大統領の行動や言葉に、世の中はいちいちはらはらと波立ち、良きにつけ悪しきにつけ影響を受ける。まるで世界のトランプ番長だ。

 その一つに反グローバリズムもあるようだ。仕事が、生活が、国が、グローバルであること、インターナショナルで開かれていることが素晴らしいとされていた世の中に、「自国は自国民ありきで存在するべきである 」 と翻って、欧州も日本も「まさに……。実はそうですよね!」とばかりにじわじわ同調している。

 もちろん、トランプ大統領の言葉に前へならえをしたわけではなく、すでに欧州は難民・移民問題が年々深刻になっていたし、日本は歴史的な円安による外国人の流入などがあり、こちらの事情も大きい。とはいえ、トランプ番長の、最初はショックでさえあった反グローバリズムに、気がつくと欧州や日本は足並みを揃えている。

 確かに、私の住むフランスを含め欧州では、難民・移民問題が深く影を落としている。増え続ける難民や移民は、生き延びるため、もしくは自分の家族の生活のため、または自身の人間らしい生き方のため、自国から生死をかけて新天地・ヨーロッパへと海を渡ってやってきた若者たちが多い。

 この問題がなかなか解決に至らないのは、それが我らと同じ人間の命の問題だからだ。彼らの国が平和で正常に営まれること、少しでも豊かになることが一番の解決法だが、それが成される希望のないままに、長い年月が過ぎ去っている。そして、彼らをどうすべきかを決定するのは、彼らが辿り着いた国側の、人間性に任されている状態だ。 

 政治的に大きく分けると、フランスをはじめ欧州では彼らに寄り添うのが「左派」、彼らに起因する犯罪問題などから自国の民を守ろうとするのが「右派」とされる。欧州や日本の右派の勢力は、ここのところどんどん強くなっており、反グローバリズムが拡大している(ご存知の通り、ニューヨーク市の新市長はその反動とも言われる)。

 しばしば左派は、右派を冷酷と見る。左派にはない「排他」「差別」の思想が浮かび上がっているからだ。