「フランス人ファースト」を叫ぶ政党は完全に極右
フランス式庭園やその多くのお城を見てもわかる通り、フランス人は左右をはっきりさせることを好む。政治的背景が異なっているとしても、我が国の「参政党」を右に分類しているのもその影響だ。
しかも、極右政党の国民連合を率いるマリーヌ・ルペン氏や同じ極右の新興政党「再征服」のエリック・ゼムール氏と、ベクトルを同じとする「極右」に位置付けている。すなわち、参政党はフランス人にとって、文字通り、究極の排他、差別、冷酷派、超反グローバリズムというわけだ。
いやいや参政党はそうではないよ、と言ってもフランスの一般市民には通用しない。確かに、万が一、フランスの一政党が「フランス人ファースト!」を掲げたとしたら、それは間違いなく極右だ(いや、フランス人ならこの場合に及んで「ファースト」などと英語を使うことはなく、自国語をしっかり使うだろうが……)。
「大丈夫、ちゃんとしている“外国人”は別ですよ」と言われても、「フランス人ファースト!」のスローガンが街に繰り広げられることで、フランスの血を持たない私は、ある日突然、白人の隣人たちとは違うセカンド市民に成り下がるのだ。
四半世紀の間、フランス人と同様に、家庭を持ち仕事を持ち、パリを愛して幸せに生きてきたのに。それはどんなに辛いことだろう、想像するだけでも鬱になりそうだ。
最近アメリカで、普通に日常を送っていた10代半ばのアメリカ人の男子が、トランプの移民排除政策で学校にさえ安心して行けなくなった現在の恐怖の日々を、市議会で涙をこらえながら訴えた。
移民・税関捜査局(ICE)の取り締まりが自分の町でも始まって、ある日から突然何も悪いことなどしていない、ただ肌の色が濃いだけの隣人が捕まっていく現実。自分が家にいない間に、もしかしたら親も捕まってしまい、別れ別れになってしまうかもしれないという毎日の不安と緊張。涙をのみながら絞り出す彼の一言一言は、アメリカでの移民対策がどれだけ人間性を欠いているかを、多くの人に気づかせた。
そのビデオは、IS(イスラム国)によるパリ連続襲撃事件から10年が経ち、右派思考がさらに強くなっていたフランスにも駆け巡った。反グローバリズムに潜んだ非人間性に、私たちは目を向けなくてはならないことを知ったのだ。