朝日が昇る岩手県大船渡市赤崎町で、山林火災の消火活動を行う自衛隊のヘリコプター=3月4日午前6時39分(写真:共同通信社)
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 民家からオレンジ色の炎が何本も吹き出し天井の梁が崩れ落ちる。炎にすっぽり包まれている民家もある。このような民家がそこここにあるが、後方の山林はもっと激しく燃えている。まるでつい最近テレビで見た光景と瓜二つだ。あれはアメリカのロサンゼルスだったが、今度は日本の三陸沿岸だ。

 1月にアメリカのカリフォルニア州のロサンゼルス近郊での山火事の報道がされた。瀟洒な住宅地に建っていた豪邸を含め多くの住居が炎を噴き上げて燃え、それを被災者が呆然と眺めている様子に心を痛めたものだ。アルバート・ハモンドのヒット曲「カルフォルニアの青い空」にあるように、カリフォルニアは晴天が当たり前、常にカラカラに乾燥した地域だ。そこで起きた山火事が高級住宅地にまで広がった。消火用水が不足していたり、風速が強かったりという理由もあったろうが、筆者も含め多くの日本人は、あのような大火災は日本では起きないだろうと「対岸の火事」として眺めていたに違いない。

平成以降で最大の山林火災

 だが、その認識は間違っていた。まだロスの山火事ほどではないにせよ、日本の三陸地方でも住居が焼け落ちる山火事被害が起きている。

 山火事はまず2月19日に大船渡市三陸町綾里(りょうり)で発生した。この火災は25日に鎮火をし、約324ヘクタールを焼失したが、焼けた地域には民家も無かったことで人的な被害はなかった。

大船渡市と陸前高田市、山火事の発生箇所(共同通信社)

 この鎮火とほぼ同時に、隣接する陸前高田市でも山火事が発生した。ゴミを燃やしていた火が山に移ったのが原因だった。火は大船渡市にまで延焼するが、自衛隊のヘリも出動して消火に当たった結果、翌26日正午ごろに鎮火する。

 ところがこれで終わりではなかった。26日の午後1時ごろ、最初の山火事が起きた地区のすぐそばでまた山火事が起きる。大船渡市の赤崎町合足地区、三陸町綾里の小路地区、田浜地区などである。3月4日現在で鎮火はされておらず、すでに焼失面積は2600ヘクタール、これまでに約3800人が避難しており、84棟の民家が全焼、死者も1人確認されている。すでに平成以降の山火事で最大規模の被害となっている。