関税による米国のインフレ再燃リスクは大きくない
——日本株にとって一番厄介なシナリオは。
市川氏:トランプ氏が選挙期間中に発言していた、すべての国の製品に一律10〜20%の追加関税を課すということを実際にされると、日本だけでなく世界経済にも大きな影響が出てきます。これが日本株のトランプ関税リスクとしては最も大きなものと考えます。
ただこれは米国への影響も大きいので、発動のハードルはかなり高いとみています。仮に一律10%の追加関税が発動された場合、米国の物価上昇率を1%ポイント程度、押し上げるインパクトがあると考えています。
現状、トランプ政権は「一律関税」ではなく「相互関税」の導入を検討しており、個別の国と個別の商品について話し合う形となる公算が大きくなっています。日本は米国からの自動車輸入に対する関税はゼロとしていますが、トランプ政権は日本の車検制度や安全基準、補助金などを「非関税障壁」とし、関税以外に米国車の販売に妨げになっていると指摘することも想定されます。
非関税障壁を口実に、日本車に追加関税が課せられるリスクはあり、警戒感が残ります。関税政策については具体的な内容がほとんど固まっていないので、投資家は詳細が明らかになるのを待っている状況です。
一方、トランプ氏は「インフレ非難」で選挙に勝った経緯があります。米国では2026年に中間選挙もあるので、インフレを招くような無茶な関税引き上げ政策は難しいと考えています。
関税の引き上げは、中国を除いた各国との、あくまで交渉材料であり、個別に交渉が行われる限り、関税による米国のインフレ再燃リスクは大きくないと思います。
>>(後編を読む)日経平均4万円突破には何が必要?トランプ関税の動向だけではない、日本株に追い風を吹かせる要素とは
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