日本には厳しい要求はしてこない?
市川氏:トランプ第2次政権が現時点(2月18日時点)で発動しているのは、中国からのすべての輸入品への10%の追加関税のみです。中国に対しての関税は、中国を米国のサプライチェーンから完全に切り離す「デカップリング」政策の一環という意味合いが強く、今後も段階的に引き上げていくだろうと見ています。関税の引き上げが中国に対してのみ行われるのであれば世界経済、米国経済への影響は限定され、過度に心配する必要はありません。
今後、延期されているカナダやメキシコなどへの追加関税が出てくる可能性はありますが、トランプ氏はすでに彼らに国境警備を強めさせたことが成果としてあります。
日本の自動車の場合、メキシコでの現地生産分を米国へ輸出するルートもあるため、メキシコなどに対する追加関税の動向も引き続き注視する必要がありますが、実際に追加関税をどこまで課すかはまだ明確になっていません。
日本も自動車や鉄鋼・アルミニウムで関税の対象となる可能性はありますが、報復関税を発動して米国と戦うような姿勢は示していません。

結局のところ、トランプ関税の真の狙いは、米国内への生産回帰と雇用増、海外からの投資増、海外への輸出増と思われます。ここに関してはすでに石破総理が「対米投資の1兆ドルまでの引き上げ」「液化天然ガス(LNG)の輸入拡大」を日米首脳会談の手土産にしました。
日本はトランプ氏の狙いに応えているほか、中国や北朝鮮を見据えた時に安全保障面でも重要な位置にあることから、日本に対しては厳しい要求はしてこないだろうと見ています。
現状日本は、米国に対して相互関税や鉄鋼・アルミニウム、自動車への関税適用除外を申し入れています。今後は日本政府の交渉力が試されるところです。