タイピングだけでは「理解した気になる」だけ

酒井:物事を聞いて書き留めるとき、「情報の入力→構造化→出力」という過程をたどります。この中の「構造化」というプロセスは、脳で言語処理を司る言語野という領域で行われます。これは自分の言葉で組み立て直すことを指し、理解力や記憶力に直結します。

(図:共同通信社)
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 ところが、キーボードでは次々と情報を入力することに注力するあまり、構造化を素通りしてしまいます。タイピングでは運動野という領域の指に対する絶え間ない指令が脳に占めるリソースに対して大きくなってしまい、言語野の寄与が下がるのです。手や上肢のわずかな動きだけで済む手書きとは大きく異なります。

 手書きであれば運動野の指令を抑えられることに加え、キーワードの抽出や重要度の高い内容を確認するなど、頭の中で整理が進みやすくなります。タイピングのみで学ぶ子どもは、考えることが封印されて「わかった気になるだけ」という危険があります。

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*1Paper Notebooks vs. Mobile Devices: Brain Activation Differences During Memory Retrieval