そもそもUSAIDとはどんな組織?

 トランプ政権がこれほどまでに敵視するUSAIDとはどのような組織なのでしょう。

 USAID(United States Agency for International Development)が創設されたのは1961年です。当時の大統領は、後に暗殺されたJ. F.ケネディ氏。旧ソ連との東西冷戦が緊張感を増していた時期で、新たに制定された「対外援助法」に基づき非軍事の国際協力を担う独立組織として発足しました。

図:フロントラインプレス作成

 背景には、国際的に影響力を強めるソ連に対抗する必要性と、世界各国の安定と経済発展が米国の安全保障につながるという理念がありました。

 半世紀以上の期間を経て、USAIDは大きな組織になりました。

 連邦政府予算の2023 会計年度の実績ベースを見ると、400億ドル(約6兆円)がUSAIDの対外援助に充てられています。米政府全体の年間予算の1%以下ですが、対外支援の額としては世界最大と言われます。USAIDの拠点は世界約60カ国にあり、年間で1万5000件ほどの事業を200超の国・地域で展開。職員の3分の2は米国外で活動しています。

 活動内容は、難民に対する人道支援や貧困対策、女性や子どもの保健・教育など多岐にわたります。地雷除去、人身売買防止のための警察官育成、野生動物の不法取引の取り締まりなども任務に含まれます。

 紛争地での支援や災害援助は最も重要な任務です。ロシアの侵攻を受けたウクライナには多額の予算を投入し、経済支援や負傷兵の治療などを続けてきました。イスラエルの軍事攻撃で大きな被害を受けたパレスチナ自治区ガザでは、国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)を通した人道支援も進めています。