「亡くなられた原因の解明は、極めてプライベートな部分に踏み込むこと。県は当事者ではなく、個々の投稿の発信者特定やファクトチェックをする権能がない。原因究明まで踏み込むことはできない」

 なぜそこまで他人事なのか。県はSNSの誹謗中傷を防ぐ条例を制定しようとしているのに、まさに県政をめぐって起きた事案を調べないのか。私はさらに単刀直入に踏み込んだ。

──斎藤さんは当選時にSNSの勝利とおっしゃっていたが、斎藤さんの当選と竹内さんへの攻撃や誹謗中傷はいわば表裏一体のもの。そこから目を背けて一般論を繰り返すのは、ご自身が立花氏の応援を受けたり、その情報をもとに投票したりした人が多いことを意識している、つまり彼らを敵に回すことを恐れているのですか。

「その指摘は個人の考えだと思うが、私としては誹謗中傷やデマをSNSで発信するのは許されないという考えに変わりはない。行政が個人間のSNSのやり取りに立ち入ることは難しく、調査は難しい」

 私個人の考えではない。市長らが実態調査を求めているのだ。また、知事選で立花の情報発信が斎藤当選の大きな要因になったことは、専門家の分析でも明らかだ。「誹謗中傷はいけない」などという自明の一般論ではなく、竹内の死を踏まえて具体的なメッセージを出すべきというのは、前述の通り、県政担当記者たちや越田が言っているし、複数の報道機関が指摘している。

【関連記事】
識者が改めて分析、SNSパワーで勝利した斎藤元彦知事、貢献したのはPR会社ではなくやはり立花孝志氏

 県警本部長が立花のデマを明確に否定したように、然るべき立場の者が具体的事案を挙げて呼びかけてこそ、抑止効果が高まるのではないか。

「震災から30年」の翌日に亡くなった竹内の思いとは

 竹内が亡くなった1月18日は、阪神・淡路大震災から30年という大きな節目を迎えた翌日だった。兵庫県政にとって重要な「1・17」をまたぎ、何か思うところがあったのだろうか。竹内の妻に聞くと、こう言った。

「そこはわからないですが、そのあたりもふさぎ込んではいました。私たちも生活する中で震災30年の話題や式典のニュースはちらっと見ています。それで思うところがいろいろあったのか…テレビを見ていても虚ろな感じで、ちょっと触れられなかったので。ただ、30年前は…30年後にこんなことになるとは、とても思わなかった」