私もその場にいた。終了後、何人かの記者と話すと、「立花やその支持者の応援を失い、自分に矛先が向くことを恐れているのでは」という声が複数あった。中継動画を見たある県議は、「彼は完全に戻りましたね。百条委でわれ関せずの答弁を繰り返していた去年の夏頃に」と苦笑した。

 1月25日にあった県と市町の懇話会では、市長会会長である酒井隆明(丹波篠山市長)から「竹内さんにどのような攻撃、誹謗中傷があったのか、きちんと調査・解明してほしい」と要望が出た。続いて川西市長の越田謙治郎が、SNSでの誹謗中傷を許さない声明を知事と市町長が共同で出すことを提案。斎藤も同意し、県が文案を作成することになった。

「原因究明まで踏み込めない」と斎藤

 しかし、終了後の知事囲み取材のコメントは、やはり従来の一般論の域を出ていない。

 共同声明を提案した越田は、竹内が姫路市議だった20年以上前からの友人で、県議時代は同じ会派で机を並べていた。声明の意図をこう語る。

「単に誹謗中傷はだめです、という一般論では意味がない。竹内さんが亡くなられた今回の事案にしっかり言及したうえで、事実に基づかない批判は誹謗中傷になるんだと訴えないと。

 ただ、こういう呼びかけを知事一人に背負わせるのはリスクもあり、躊躇するのも理解できる。だからみんなで言いましょうと提案したんです。知事選での敵・味方に関係なく、首長職にあるわれわれが、それぞれの陣営に呼びかけることが大事だと」

 越田の意図は理解できる。だが、知事選の最中ならまだしも、選挙後も県政の混乱と分断が収まらず、デマと誹謗中傷が飛び交い、犠牲者が出た今となっても目を逸らし続ける──直視しなければ問題は存在しないとでもいうような──斎藤の姿勢からは、知事という公職を担う責任感が感じられない。昨秋の不信任で指摘されたように、「知事の資質」に大きな疑念を抱かざるを得ない。

 1月29日の知事会見で、私はあらためて問うた。市町との懇話会で求められた竹内への誹謗中傷の実態調査をしないのか。共同声明を出すにしても、それを踏まえるべきではないか。

 だが、消極姿勢は変わらない。