どこに下水管があるかわからないという現実

 国はストックマネジメントのガイドラインを作り、下水道を管理する地方公共団体に効率的な点検・調査を促しているが、整備の時期や実際に埋設した場所がわからないことも多く、維持管理や更新のための計画を作る場合も、時期や場所がわかっている下水管だけを対象にしていることが少なくない。

 下水道の修繕計画を立てようとしても、そもそも更新が必要な管がどこにあるのかわかっていないケースさえ存在するのだ。

 こうした状況に危機感を覚えた国は、2024年度以降、「ウォーターPPP」の導入を進めている。

 ウォーターPPPとは、上水道や下水道、工業用水道など水分野の公共施設を対象にした官民連携の一手法だ。PPPとは、有料道路や公共施設などの運営権を一定期間、民間の企業コンソーシアムに売却し、民間企業のノウハウや資金を用いて効率的に社会・公共インフラを運営・整備する仕組みである。

 なお、PPPには運営権だけを譲渡する場合はコンセッションや、インフラの建設まで民間が関わる「BT+コンセッション」などの種類がある。その中でも「BT+コンセッション」は秩父宮ラグビー場の建て替えでも活用されたため、耳にしたこともあるかもしれない。政府が旗を振る「アリーナPPP」でも取り入れられている。

 ウォーターPPPは、これまでの下水道管理の民間委託とは大きく異なる。

 例えば、下水道の維持管理を事業者に委託する場合、従来は3~5年程度の短期契約が中心だったが、ウォーターPPPでは契約期間を10~20年と大幅に延ばしている。

 また、これまでは発注者である地方公共団体が要件や方法を定める仕様発注が中心だったが、ウォーターPPPでは性能や品質要件を満たせば、具体的な仕様や方法は事業者に任せる性能発注を採用している。

 加えて、従来の民間委託は維持管理のところまでだったが、今回のウォーターPPPでは、実際の更新工事まで民間に委ねている。

 こうした自由度を与えているのは、事業者が長期的な時間軸でインフラ経営に当たれるようにするためだ。

 下水管や処理場の状況を調査し、老朽化の実態を把握した上で、どこをどういうタイミングで修繕し、更新していくのかという更新計画を作るという部分を民間の事業者に委ねることで、最適な維持管理・更新を実現しようとしているのだ。

 PPPの導入によって、受益者の負担が減ることは間違いない。