6.韓国の防衛力も低下

 文在寅政権は、北朝鮮の核ミサイルの脅威が飛躍的に高まっているにもかかわらず、ごまかしの南北融和のために、韓国国家を防衛するためのあらゆる力を削ぎ落し、北朝鮮の南侵を防ぐ能力を著しく低下させた。

 具体的には以下のとおりである。

①韓国国防部が国防政策を対外に知らせるために刊行している「2018国防白書」から「北朝鮮政権と軍は敵」という表現を外した。

 代わりに「敵」の概念を「大韓民国を脅かし侵害する勢力」と規定した。北朝鮮は韓国に侵攻する敵という認識を韓国国民の意識から取り除こうとした、あるいは薄めようとした。

 北朝鮮が現実に軍事力や核ミサイル能力を増強しているにもかかわらず、真逆のことを行ったのである。

②北朝鮮の脅威に対し真逆の「板門店宣言」(2018年4月)を両国で発表した。そして、韓国は宣言を現実に実施することを始めた。その内容は、

ア.南北自主統一を早める

イ.本年中に終戦を宣言し、休戦協定を平和協定に転換する

ウ.朝鮮半島の非核化に向け努力する、という3つの合意だ。

 その軍事分野には、「一切の敵対行為を全面中止する」「段階的に軍縮を行う」「非武装地帯を平和地帯にする」と書かれ、同年9月平壌宣言では、「11月1日から軍事境界線上空に飛行禁止区域を設定する」ことが加わった。

 両国は、軍事境界線より南側の鉄条網、地雷、監視所を取り除かなければならなくなった。

 現実に、南北軍事境界線付近の障害や監視所の一部が、取り除かれた。

③米韓の軍事演習を縮小した。

 指揮機関は地図上で指揮所演習(図上演習)は実施するが、実働演習を取りやめた。

 そればかりか、文在寅政権はすべての演習を取りやめるように要求した。

 米軍と韓国軍が北朝鮮の南侵に対して防衛を行う場合、日頃から実働演習と指揮所演習を実施しておくことは、両軍が防御戦闘をスムーズに実施し、齟齬をなくすために、絶対に欠かせないことである。

 北朝鮮が米韓軍事演習をやめよといっても、北朝鮮の軍事的脅威がある限り継続しなければならい。

 韓国の領土と国民を守るためには、米韓軍が存在することとそれらが機能することが必要なのである。

④北朝鮮の「瀬取り」に対する警戒監視活動をしなかった。

 北朝鮮の核ミサイル開発を停滞させるためには、経済制裁を確実に実施することが必要である。

 そのための手段である監視行動について、韓国は当時、北朝鮮の「瀬取り」(洋上で船から船へ船荷を積み替えること)に対する警戒監視活動に参加していなかった。

 日本、米国、英国、カナダ、フランス、オーストラリア、ニュージーランドの7か国が警戒監視活動に参加していた。

 ところが、北朝鮮から核ミサイルを含む軍事的脅威を受けているはずの韓国は、参加している記録がなかった。