4.陰で核ミサイル開発を飛躍的に加速
以上のように、文在寅大統領は、在任期間である2016年から2022年までの間に南北融和の環境醸成に努め、直接会談も行った。
現在、前述の宣言から5年以上経過しているが、核ミサイル開発の凍結は全く進んでいない。
北朝鮮が実際に実行したのは、発射実験場の発射関連施設を破壊するのではなく分解し、短期間のうちに改修できるものや使わなくなった核実験場を爆破しただけであった。
金正恩氏は融和姿勢を見せてはいたものの、その陰では着々と核兵器やこれを運搬するミサイルや潜水艦の開発を行っていた。
2017年以降、「S-300/400」タイプの防空ミサイルの開発を進め、米韓軍機が北朝鮮の上空を自由に飛行することができなくなった。
2020年には弾薬・ミサイル燃料を製造する工場を完成し、大量のミサイルの固体燃料製造が可能となった。
2020年から軌道を変える弾道ミサイルや極超音速ミサイルの開発が飛躍的に進んだ。
この時期に開発を終えたロシアの「イスカンデルM」タイプの短距離弾道ミサイルは現在、ロシアに提供されウクライナ領土を攻撃している。
2022年3月には、火星17号ICBMの発射実験に成功し、米国へ核ミサイルを撃ち込む能力を保有した。
2021年には長距離巡航ミサイルの実験を成功させた。このミサイルは日本を攻撃することが可能だ。
主に2015年から2021年にかけて潜水艦発射弾道ミサイルの「北極星号」(実験用の水中発射装置から発射)やイスカンデル版(潜水艦から発射)の実験を行い概ね成功させた。
極めつきは、2017年9月3日に第6回目の核実験を実施したことだ。
日本の防衛省は1回目の発表では70キロトン、2回目では120キロトン、最終的には160キロトン、ノルウェー地震観測は120キロトン、米国の研究機関は140キロトンと結論づけた。
だが、韓国軍参謀本部だけは50キロトンと結論づけ、韓国はその後も修正することはなかった。
朝鮮半島との利害関係がないノルウェーの数字か、あるいは西側諸国の研究機関や防衛省の平均値と比較すれば、韓国のデータは意図的に低く抑えられたとしか考えられない。
北朝鮮は当時、「我が国は水爆やICBMまで保有した核強国だ」と発表したにもかかわらず、実験データを意図的に低く抑えたのだ。
重大な脅威が迫ってきているにもかかわらず、南北融和のために文在寅氏は韓国国民に対して誤った情報を流し、韓国国民を欺いた。
韓国の板門店で文在寅氏が握手をして融和政策を進めた結果が、前述のとおり、核や弾道ミサイル開発全盛時代となったのである。
文在寅氏の融和政策は、北朝鮮の核兵器とミサイル開発を進めることに著しく貢献したことになった。