米国の高インフレが円高を招く理屈
私は今後、徐々に円高方向に動いていくと思います。
日銀は政策金利を0.5%に引き上げ、今後も0.75%、1.0%へと引き上げていくタイミングを探っています。そのことから、日米の金利差は縮まっていくというのが一般的な見方です。
しかし、決して速くない日銀の利上げのペースと、先ほどお話ししたような米国におけるインフレリスク再燃による利下げの停滞を考慮すれば、日米の実質金利差はこれから先も縮小しない可能性が高いと私はみています。

拡大画像表示
金利差が広がれば円安になる、というのがこれまでのセオリーでした。しかし、トランプ大統領の米国はもはや予測不能で、必ずしもそれは通用しなくなっています。それが、金利差拡大→円安という「常識」に反して、金利差が縮小しなくても円高が進むと考える理由です。
トランプ大統領は、自ら高インフレを招く政策を打ち出しておきながら、一方で利下げを求めるという矛盾した言動を繰り返しています。中央銀行は独立性を担保されていますが、実際にはこうしたトランプ大統領の意向は無視できないでしょう。とすれば、インフレが加速してもFRBは後手に回り、実体経済は弱っていくと思われます。
高インフレによる景気の悪化と矛盾する政策により株価には下押し圧力が強まり、為替では「ドル売り」という局面になる可能性があります。つまり、円高になるのです。
そもそも、トランプ大統領は輸出拡大による米国内の産業振興のためにドル高を是正したいと考えているようです。そのことから、1985年に各国が協調介入してドル高を是正した「プラザ合意」のトランプ版、いわば「プラザ合意2.0」を仕掛けてくるとも見方もあります。
ですが、わざわざプラザ合意2.0を仕掛けなくても、高インフレによる実体経済の悪化でドル売りが勝手に進むのではないでしょうか。