長期金利上昇でハイテク株は調整へ

 米国ではトランプ第2次政権が誕生し、就任初日に大量の大統領令に署名するなどお騒がせぶりを発揮していますが、トランプ大統領が掲げる関税と移民に関する政策が今後、インフレを加速させる懸念があります。

 すでに、債券市場では高い関税が招くインフレに関心が移っており、現在4.6%程度の米10年国債の金利は今後5%を超え、6%程度にまで上昇する可能性を指摘する見方があります。なかには8%程度になってもおかしくないといった極端な声すら聞かれます。

 まだ中国に対する関税がどうなるのかなど先行きは不透明で、様子見のマーケット関係者も少なくありません。ですが、今年夏以降には完全にインフレ再燃懸念に注目が集まり、株式市場のムードは大きく変わってくるとみています。

DeepSeekショックで日本株も半導体関連を中心に下落した(写真:ロイター/アフロ)

 これまで米連邦準備理事会(FRB)は利下げモードでしたが、すでにそのような状況ではなく、利下げ停止、さらにはまだ可能性は低いものの利上げすらありうる、といった話になりつつあります。

 一般的に長期金利が上昇すれば、株価の割高・割安を測るものさしである株価収益率(PER)が高い企業ほど株価は下がる傾向にあります。理論的には株価は将来の収益を現在価値に割り引いて計算されますが、長期金利が上昇すると割引率は大きくなり、株価が下がります。PERが高い企業ほど将来への成長期待が大きいので、その分、長期金利上昇の影響を受けやすいのです。

 エヌビディアの実績PERは50倍ほどで、米国の主要な株式指数S&P500のPER(約22倍)と比べてもかなり高い状態にあります。長期金利が上昇していけば調整は不可避と考えるべきでしょう。そもそも、米国の株式市場全体が歴史的に割高水準となっており、金利上昇への耐性は弱いと言わざるを得ません。

  トランプ大統領が掲げる政策がインフレを加速させるならば、いつ、こうした調整が入ってもおかしくありません。それが明日なのか、半年後なのか、1年後なのかは誰にもわかりません。

  今回のディープシーク・ショックのように、マーケットは常に、不意を突かれるものです。そのため、心の準備はしておいた方がいいでしょう。

 そして、トランプ2.0が招くとみられる高インフレは為替にも影響を及ぼします。