宙吊り国会で財政の健全化は遠のく?

 加藤勝信財務大臣はこの1月24日、国会での演説で「歳出・歳入両面の改革を着実に推進」すると述べました。さらに、債務残高対GDP比についても「世界最悪の水準にあるなど引き続き厳しい状況」とし、財政健全化の実現に意欲を示してはいます。

 ただ、歳出については見直しによる抑制どころか、国会での審議を通じて増える可能性も出ています。

 2024年10月の衆院選で与党の自民・公明両党は大敗し、石破政権は現在、少数与党となっています。ハング・パーラメント(宙吊り議会)状態に陥っているのです。議決の優越がある衆院で過半数割れになっているため、予算案を成立させるためには、どうにかして野党側の協力を得るしかありません。

 野党はこの機を逃すまいと、各党が独自案を次々提案しています。国民民主党が強く訴え、2024年末の税制改正協議でも注目を集めた「103万円の壁」問題や、立憲民主党が掲げる「給食費無償化」、日本維新の会の「高校授業料無償化」など、どの政策も実現すればさらに歳出を増やす要因となるものばかりです。全体の歳出を増やさずに野党案を受け入れるのであれば、現行の歳出項目のどこかを削らざるを得ません。

 増えない賃金や物価上昇などに取り囲まれた日々の暮らしを考えると、予算案の審議に無関心ではいられません。2025年度予算案の本格的な審議が始まる前に議論のポイントを把握しておくと、予算審議の大切さが今以上に実感できるはずです。

フロントラインプレス
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