予算案づくりの手順はどうなってる?

 各省庁は5~8月にかけて、翌年度の実施事業や必要経費を盛り込んだ「概算要求」をまとめ、財務省に提出します。各省庁は事前に地方公共団体や関係業界などの要望を聞き、実施事業を検討・絞り込んでいます。“有力政治家の声”に耳を傾けたり、逆に官僚側が有力政治家に根回ししたりすることも珍しくありません。

 9月になると、財務省は概算要求の精査に着手し、その結果を踏まえて内閣が12月中に「政府予算案」を作ります。もちろん、「案」は案ですから、そのままで執行することはできません。翌年1月の通常国会に予算案を提出し、国民の代表たる衆参両院での審議後、議決されて初めて確定します。報道でよく耳にする「新年度予算案が可決、成立」というニュースは、この段階を報じたものです。

宙吊り国会”で石破首相は野党の要求にどこまで歩み寄るか(写真:つのだよしお/アフロ)

 国会で承認されていない予算は執行できませんから、政府は新年度が始まるまでに予算案を成立させなければなりません。そうやって新年度の開始前にできたものが「当初予算」、年度の途中で組み直したものが「補正予算」です。国会審議が紛糾し、年度開始までに予算成立が間に合わない場合には、義務的経費を主とする「暫定予算」を組み、本予算成立までのつなぎとすることもあります。

 こうした手続は日本国憲法に基づくもので、第86条は「内閣は、毎会計年度の予算を作成し、国会に提出して、その審議を受け議決を経なければならない」と定めています。また、憲法第60条は「予算は、さきに衆議院に提出しなければならない」と規定。そのうえで、もし予算案に関して衆院・参院の議決が異なった場合は衆院の議決が優越するとしています。

 一方、日本政府には2種類の会計、つまり“2つの財布”があることにも注意が必要です。

 1つは「一般会計」です。歳入として税収や国債発行による収入などを見込み、歳出では公共事業や社会保障など一般的な行政事業にかかる経費が計上されています。これとは別に、事業目的や収入源を限定して運用されているのが「特別会計」で、一般会計とは切り離されています。

 例えば、復興特別所得税などを財源に東北地方の復興事業を行う「東日本大震災復興特別会計」、石油石炭税などを原資として地球温暖化対策や原発事故の損害賠償などに充てる「エネルギー対策特別会計」などがあります。

 特別会計は2024年度現在、全部で13会計を数えます。一義的な所管は財務省ではなく、事業を主管する各省庁。関連の業界・団体と狭い範囲で強く結びついているケースもあり、「癒着の温床」「実態が見えない」と言われることもあります。

 それでは、2025年度の一般会計予算案を見ていきましょう。