EV後退のトランプの米国で売れそう

 クルマのロール量も少なめだが、決してサスペンションが硬いという印象はない。

 また、パドルシフトでシフトダウンに対する速度の制御が実にスムーズ。そのままコーナーリングに入り、軽いアクセルワークでも出力88kWのモーターの反応が良い。

 さらに、後輪に駆動力を伝達する電子制御カップリングは、雪道で威力を発揮する。

「クロストレック S:HEV」のインテリア(写真:筆者撮影)

 だから、滑りやすい路面でかつ長く続く下りのワインディング路で、グイグイと走っていくのだ。

 クロストレック S:HEV開発者と意見交換したが、ユーザーや販売店からは「走りが実に楽しい」という声が多いという。

 また、スバルのハイブリッド車(マイルドハイブリッド)は他社のハイブリッドを比べて燃費が悪いと言われていたが、S:HEVの実燃費はかなり良いことを、開発者自身で長距離ドライブをして実感したという。

電子制御カップリングの採用により、旋回性能が一気に上がったことが雪道だとはっきり分かる(写真:筆者撮影)

 今後、S:HEVは「フォレスター」での導入が決まっているが、その他のモデルでの導入の可能性もありそうだ。

 スバルにとっての主力市場であるアメリカでは、現地時間の1月20日に第2次トランプ政権が発足した。それに合わせて、「グリーン・ニューディール政策の終了と、それに伴うEV義務化の撤回」や「パリ協定からの離脱」が明らかになった。

 そのため、アメリカにおけるEVシフトは沈静化に向かうという見解を示す人が少なくない。

 スバルとしては、S:HEVが当面の間、アメリカ市場で大きな助けになりそうだ。

桃田 健史(ももた・けんじ)
日米を拠点に世界各国で自動車産業の動向を取材するジャーナリスト。インディ500、NASCARなどのレースにレーサーとしても参戦。ビジネス誌や自動車雑誌での執筆のほか、テレビでレース中継番組の解説なども務める。著書に『エコカー世界大戦争の勝者は誰だ?』『グーグル、アップルが自動車産業を乗っとる日』など。
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